SSブログ

リンダ・アーサー著『20世紀のアロハ服』その134 1960年代の男性服(3) [リンダ・アーサー著『20世紀のアロハ服』]

元ハワイ大学教授のリンダ・アーサー氏が書いた
『20世紀のアロハ服』という本の翻訳をお届けしています。

現在の話題は「1960年代の男性服」についてです。



『第7章「1960年代:州昇格後の時代

 男性服(3)

 (訳者補足:レイン・スプーナーの創業者である)レイン・マッカラーは、
アロハシャツにテーラーリングの要素を導入することで、
彼のアロハシャツ・ビジネスを始めた。

彼のシャツは、アロハシャツに比べて
よりフォーマルなツーピースカラー
(訳注:台襟と襟の2つのパーツからなる襟)構造と
ボタンダウン・カラーとで作られたのである。

もともと彼のシャツはコットン100%であった。

レインは、最もポピュラーなシャツは着古され、
色褪せていることに気が付いた。

このような色褪せたスタイルのシャツは
サーファーたちによって着られていた。

マッカラーは、この外観を真似るため、
1961年に、布地の裏側を表にひっくり返すことにした。(続)』



まず最初に、
「1961年に、布地の裏側を表にひっくり返すことにした」
とありますが、「1961年」というのは明らかに間違い
(それほど早くにリバースプリントを作っていない)なので、
その点を指摘しておきます。


次に、レイン・マッカラーとレイン・スプーナーについては、
時々、事実関係の混同
(お店の「レインズ」とシャツメーカーの「レイン・スプーナー」の混同)
が見られるので、話を整理しておきます
(上の記述も、そのあたりのことがはっきり書かれていないので、
 少しわかりにくくなっています)。


レイン・マッカラーは、もともとカリフォルニアのサンタカタリナ島で
紳士服店「レインズ・メンズウェア」を営んでいました。
その後、1950年代半ば(正確な年はわかりません)にハワイに渡り、
1959年に、新しくできたアラモアナ・ショッピングセンターに
「レインズ」を出店しました。
この店では、当時流行していた「アイビー・ルック」を打ち出しており、
アイビースーツなどと一緒に
「プルオーバー」の「ボタンダウンシャツ」なども売っていました
(プリントシャツはまだなかったでしょう)。

彼は、一般的には1962年にルース・スプーナーと共に
「レイン・スプーナー」を創業したとされていますが、
どのようにして出会ったのか、創業してすぐに
「レイン・スプーナー」ブランドのシャツを作ったのかなど、
創業前後のいきさつは実はよくわかっていません。

ただし筆者が、1960年代の「レインズ・メンズウェア」の新聞広告を調べた結果、
以下の事実を見つけたので、列挙しておきます。

・1960年に「プルオーバー」の「ボタンダウンシャツ」の「無地」、
・1962年に「プルオーバー」の「ボタンダウンシャツ」の「パレオ柄」、
・同じ1962年に、「スプーナー・オブ・ワイキキ」の「サーフ・ショーツ」、
・1964年に「プルオーバー」の「ボタンダウンシャツ」の、
 ストライプ柄/チェック柄/プリント柄、
・1965年から68年は「ジャムズ」のプリントシャツ
が広告され、
・1969年になって初めて「レイン・スプーナー」のシャツ
 (まだリバース・プリントではありません)
が広告されているのです。

これらのことから筆者は、
・1962年にルース・スプーナーと仕事を始めたが、
 それはサーフ・ショーツでの協業だった
 (まだ、「レイン・スプーナー」ではなかった)
・1962年時点のシャツは、まだルース・スプーナー製ではなかった
・1969年に「レイン・スプーナー」が誕生した
と推測しています。


先日、ヤフオクに、「レインズ・メンズウェア」のプリントシャツが
出品されていたのでご紹介しておきます。こちら ↓ です。

i-img898x1198-1627983465ky0lue293999.jpg

i-img1196x446-1627983465bm5ae0293999.jpg

https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/d1000250931


この織ネーム(「R」の下側がクルリとなっている)は
新聞広告では1969年以降に出てくるものなので、
「レイン・スプーナー」製ではない、「レインズ・メンズウェア」のオリジナル商品
(ややこしいですが)だと推測されます。


ちなみに、古い織ネームは、こちら ↓ です。

1960年 織ネーム.jpg

(筆者コレクションより)

「R」の下側がまっすぐで、下に「カタリナ・アイランド」と書かれているタイプは、
1960年の広告に出てくるので、1959年から61年までのものと推測されます
(1962年からは「カタリナ・アイランド」の文字が消えます)。

ちなみにこの織ネームが付いていたシャツは「パレオ柄」で,
ボルチモアにある「Aetna shirt corp」社による製造との表記がありました
(「レイン・スプーナー」製ではありません)。




(次回に続く)

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ファッション

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。