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リンダ・アーサー著『20世紀のアロハ服』その32 1930年代~1945年の布地(5)続~コメント [リンダ・アーサー著『20世紀のアロハ服』]

元ハワイ大学教授のリンダ・アーサー氏が書いた
『20世紀のアロハ服』という本の翻訳をお届けしています。

現在は、「1930年代~1945年の布地」に関する記述をお届けしており、
今回は、前回翻訳部分に対してコメントしたいと思います。

まず、前回翻訳部分 https://vintage-aloha-shirt.blog.ss-blog.jp/2021-04-07
をお読みください。



『第4章「1930年代~1945年

  布地(5)続

順番に見ていきます。

まず、
「1930年代に和柄のコットンシャツを着ているハワイの人々」
という記述ですが、
具体的な写真が掲載されていないため、真偽のほどはわかりません。
ただ「和柄のコットンシャツ」が1930年代に多かったというのは、
筆者の感覚からはやや納得がいきません。

1930年代の和柄のアロハシャツは、写真で見る限り、
シルクか、壁縮緬(戦前はシルクの壁縮緬だったようです)のように見えるのです。

何度かご紹介していますが、こちら(1939年)↓ は

全布哇對島ゴルフ大会 大会役員 — 1939.07.17 邦字新聞デジタル・コレクション.jpg

シルクか壁縮緬のように見えます。


次の
「1937年までには、長袖シャツはトロピカル柄のカーテン生地で
非常に大規模に作られていた。」
という部分は、根拠(取材したのか文献にあったのか)が示されておらず
どのくらい信じてよいのか不明ですが、
これも、筆者が新聞広告や新聞記事などをあたって調べた限りでは、
「カーテン生地」で長袖シャツが「非常に大規模に」作られていた事実は
見つけられませんでした。
(「ウォングス・ドレイパリー・ショップ」という、
 有名なカーテン屋さんがホノルルにあったのですが、
 その店が出したアロハシャツの広告は「戦後」のものであり、
 「戦前」にも確かに作られていたことを示す広告や記事は発見できませんでした)

HAO_0027_1.JPG

HAO_0027_3.JPG

(過去のヤフオク出品物より引用)


次の
「ハワイ語が描かれた2色プリントの(訳注:コットンの)ブロードクロス」
という部分は、
このあと「1930年代~1945年の男性服」を考察する部分で再度触れられるので、
今回は割愛します。


次の
「ハワイの花柄のプリント生地が写った最初期の写真は、
これまで調べたところでは、1938年から39年のものである。」
という部分も、写真がないため、コメントのしようがありません。

「ハワイの」花柄のプリント生地、と強調しているのは、
「日本の」花柄の生地(着物地)はそれまでにも日本から入っていたためです。
ハワイで使うため、1930年代後半にわざわざプリントされたことには
筆者も同意しますが、
「1938年から39年のもの」という年代については判断を留保しておきます
(これも写真と撮影データを提示してほしかったですね)。


次の
「コットン製のハワイ柄プリントが明らかに服の上に見られ始めるのは1938年頃」
という部分は、
筆者も、新聞広告や新聞記事などを調べた結果から、ほぼ同意します。
ただし、「コットン」と、素材を明記した広告は少なかった(ほとんどなかった)ので、
「コットン製」の部分は留保しておきます。


次の
「レーヨン製衣料品が1930年代後半にごく少量作られたが、
そのレーヨン生地は品質が悪く、色の持ちも良くはなかった。」
という部分も、根拠の提示がないため、判断できません。
さきほども述べたように「素材を明記した広告は少なかった(ほとんどなかった)」ので
「レーヨン製衣料品」が「1930年代後半にごく少量作られた」と断言できる材料を
筆者は持ち合わせていません。
また「そのレーヨン生地は品質が悪く、色の持ちも良くはなかった」かどうかも
当時着ていた人へのインタビューなのか、現存している実物を見ての判断なのかが
示されておらず、著者の主観のようにも思えます。


そして最後の
「レーヨン製のハワイ柄プリント生地で作られ、
いまなお現存しているヴィンテージの衣料品のほとんど全ては、
第二次世界大戦の後に作られた」
という部分を筆者なりに解釈すると、
「レーヨン製の『ハワイ柄』プリント生地で『戦前に』作られた衣料品は
 確かにあったかもしれないが、
 戦前のレーヨン生地は品質が悪く、色の持ちも良くなかったため
 現在ではほとんどすべてが失われており、
 そのため現存しているものはほとんど全てが戦後のものだ」
ということのようです。

そう解釈するなら、筆者もその主張にほぼ同意します。

筆者も「戦前製だ」と断言できる「レーヨン製ハワイ柄アロハシャツ」は
実物でも写真でも、まだ見たことがないため、
「戦前にもあったはずだ」とはもちろん言い切れません。
ただし、なかったとも言い切れないところが少々もどかしいです。


繰り返しになりますが、
リンダ・アーサー氏のこれらの主張には、根拠や写真の提示が一切ないため、
筆者としてはそのほとんどをすんなり受け入れられません。
特に、当時の人がハワイ柄の服を着ている(ビショップ博物館で見つけた)写真を
ぜひとも見たかったところです
(筆者も、ビショップ博物館で探したことがあるのですが、
 戦前の写真は全く見つからなかったので、だからこそ余計に見てみたいのです)。




(次回に続く)

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