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ハワイの衣料品製造業の歴史 その51 1936年 「アロハ」という商標が登録された(後編) [ファンダバーク著ハワイの衣料品製造業]

ファンダバーク教授の本の翻訳が続きます。


今回も、引き続き、キング・スミスに関する記述です。
『定本ハワイアンシャツ』などでも紹介していますが、
「アロハシャツ」の商標登録にまつわる話です。
少し長いため、3回に分けてご紹介します。
今回で3回の最終回となります。


 『1936年 「アロハ」という商標が登録された(後編)

   ホノルル・アドヴァタイザー紙に載ったある記事は、
  「アロハ」シャツという用語の起源について、次のように説明している。

    ”アロハシャツの誕生は謎に包まれている。
   アドヴァタイザー紙の広告営業マン、ハリエット・レイは、
   「それは1935年に生まれたもので、自分とエラリー・チャンが
   2人で名付けた」と回想している。”

    ”ハリエットは言う。「エラリーと私は、最初のアロハシャツ広告を
   アドヴァタイザー紙に掲載しました。
   わが社のジェリー・チョンがイラストを描きました。
   その広告では、シャツの裾をズボンの外に出して見せ、
   流行の先端として、裾の左右を結んだのです。
   私たちは、名前のところでハタと困り、
   あわてて 'アロハシャツ' という愛称を付けました。」”

  キング・スミス社による、1930年代後半と40年代前半の多くの広告は、
  シャツとスポーツウェアを宣伝する際に、"アロハ"という商標名を使った。
  1939年に、ホノルル・アドヴァタイザー紙とホノルル・スターブリトゥン紙の
  両方に載ったキング・スミス社によるある広告には次のような文章があった。

    ”工場放出セール。閉店セールではありません。
   すべて新品、正規の在庫です。
   おしゃれなオリジナル・スタイルと満足感の高い着心地で有名な、
   高品質の、当店を代表する服ばかりです。
   余剰在庫が少しばかりあり、保管スペースを作りたいというだけです。
   材料費が上がっていることを思い出していただければ、
   今買うのがいかにお得かお分かりになるでしょう。
   男性物と女性物のコットン製 'アロハ' シャツ各1.00ドル。
   名前も縫製も、有名なキング・スミスだけのものです。
   前面ボタン留めスタイルまたはプルオーバー・スタイルで、
   魅力的な柄も色も種類が豊富です。
   工場放出セール価格でいくつも買ってください! 
   男性と女性のXS、S、M、Lサイズのシルク製 'アロハ' シャツ1.95ドル。
   当店の標準品質のものには、ずっと標準的な(お安い)価格が付いています。
   着心地の良いシルク素材のキング・スミスのシャツは、
   裾をズボンの中に入れても外に出しても着られるスタイルで作られており、
   本物のココナッツ・ボタンが付いています。
   XS、S、M、L、XLサイズのボーイズの 'アロハ' プレイスーツ(イラストあり)。
   短パン、今だけ95セント、シャツ、今だけ95セント。
   パイナップル・クロス製でハワイの紋章が付いた、おしゃれで小さなプレイスーツ。
   着心地抜群で洗濯可能。色は、生成り、青、薄黄色、茶、紺、青ストライプ。
   サイズは2から14まで。
    'アロハ' シャツと 'ワイキキ' ファッションのクリエーターです。”

   カハナモクのパイナップルツイードの水着.jpg
   (パイナップル・クロス=パイナップル・ツイードの
    デューク・カハナモク・ブランドの女性用水着~参考画像)


 まず、「アドヴァタイザー紙の女性広告営業マンがエラリー・チャンと一緒に、
1935年にアロハシャツという名称を考案した」という証言が出てきます。
さらに、「エラリーと私は、最初のアロハシャツ広告を
アドヴァタイザー紙に掲載しました。・・・中略・・・名前のところでハタと困り、
あわてて 'アロハシャツ' という愛称を付けました。」
とも語っています。筆者はこの証言を疑問視しています。

なぜなら、1935年のキング・スミスの広告には 'アロハシャツ' という言葉が
出てこないことを、筆者は知っているからです。
(筆者は、ハワイの図書館で、1935年、1936年の各365日分の新聞をすべて当たり、
 キング・スミスとムサシヤ・ショウテンの広告をすべて探してきました)
その結果、例えば1935年2月、4月、6月の広告では女性物のスラックスを、
同年2月にワイキキ・シャツ・テイルを、
同年3月、7月、8月にワイキキ・ショーツ・アンド・ブラ・セットを、
同年7月にロウ・シルク・シャツを取り上げていますが、
アロハシャツは出てきません。
最初と言えるのは、1936年1月の”アロハ”ポロシャツで、
1937年3月、7月にようやくアロハ・ビーチ・シャツが、
同年9月にシルク・”アロハ”・シャツが登場するのです。

 すでに教授も述べているように、
1935年6月にムサシヤ・ショウテンが出した広告が、やはり最初であると、
全ページを確認した結果、筆者は断言できます。

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アドヴァタイザー紙の女性広告営業マンはつい口が滑ってしまい、
自分の手柄であるかのように言ってしまったのでしょう。
教授は文章の中で明確に否定はしていませんが、
その1935年の広告を提示してもいません。
後年のインタビュー記事を引用しているだけなのです。

 そのほかには、1939年に、コットン製 'アロハ' シャツが1.00ドル、
シルク製 'アロハ' シャツがその倍の1.95ドル、という点に注目したいと思います。
以前のブログで筆者の推測を述べましたが、
やはりコットン製が廉価版、シルク製が高級版とランク分けされていたようです。
おそらく前者が単色、後者が多色だと思われます。


(次回に続く)

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