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『ヴィンテージアロハシャツ』15~第二章 アロハシャツのことをもっと知ろう●アロハシャツはこうして生まれた [枻文庫『ヴィンテージアロハシャツ』]

しばらくは、2005.10.6発売/現在品切れ の拙著 
枻文庫『ヴィンテージアロハシャツ』から、
文章を再録します。

https://www.ei-publishing.co.jp/magazines/detail/lightning-c-401979/

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%AD%E3%83%8F%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%84-%E3%82%A8%E3%82%A4%E6%96%87%E5%BA%AB-%E8%A7%92%E7%94%B0-%E6%BD%A4/dp/4777903990

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第二章 アロハシャツのことをもっと知ろう
●アロハシャツはこうして生まれた

 アロハシャツが、日系人の着古したキモノから作られたわけじゃないとしたら、
一体どのようにして生まれたのだろう? 
前に、「商品としてのアロハシャツは一九三五年頃、
ホノルルのダウンタウンにあった個人商店で作られた」と書いたけれど、
実はそれこそがアロハシャツの起源なのだ。
日系人が自分で着るために作り出したものと言うよりも、
ホノルルの商人が最初から商品として売るために考案したものだったのだ。
しかも地元の人の普段着としてではなく、
ハワイを訪れた観光客向けの土産物として売るためだったのだ。

 例えばこんな証言がある。戦前のホノルルのダウンタウンに生まれ育ち、
実家が「ハワイ・インポーティング・カンパニー」という生地店を営んでいた
ジューン・コメイジ(古明地)さんは、こう語ってくれた。
「戦前にアロハシャツを見た覚えはありません。
ほとんど売られていなかったと思いますよ。もし売っていたとしたら、
『ムサシヤ・ザ・シャツメーカー』か『リンズ・テイラー』あたりでしょう。
どちらもオーダーメイドでシャツを作っていて、
ハワイに来た有名俳優なんかがそういうお店によく来ていましたから」

 見た覚えがないというのは、地元の人がほとんど着なかったからだろう。
最初期のアロハシャツは、古明地さんも言っているように、
観光客向けにオーダーメイドで作られることが多かった。
でも既製品として売られる場合もあった。例えば、「ムサシヤ・ショウテン」
(一九三五年に地元の新聞にアロハシャツの広告を史上初めて出した雑貨店。
シャツのオーダーメイド店「ムサシヤ・ザ・シャツメーカー」とは別の店)や、
「キング・スミス・クロージャーズ」
(エラリー・チャンという中国系アメリカ人が経営する洋服店。
彼は一九三六年に「アロハシャツ」という商品名を商標として登録した)などがそうだ。

 それでは、誰がアロハシャツを発明したのだろう? 
一般にはエラリー・チャンが発明したとされているが、それは本当なのだろうか? 
実はこれが謎なのだ。確かに彼が商標登録したのは事実だが、
だからといって「彼がアロハシャツという名前を考え出した」ことにはならないし、
「彼がアロハシャツを発明した」ことにもならない。
本人は生前、新聞の取材に、自分が発明し名前も考えたと答えているが、
実はその証拠はなく、真偽のほどは不明なのだ。
本当の発明者は、「アロハシャツ」の広告を最初に出した
「ムサシヤ・ショウテン」かもしれないし、あるいはもっと別の店かもしれない。
結局、誰が発明したのかは定かではないのだ。

 発明者はともかく、最初期のアロハシャツはホノルルの個人商店で売られていた。
作っていたのは、そういう店の奥や二階にあった作業場や、
内職に出した先の家庭などだった。また主な担い手は日系女性だった。
当時の日系女性の中には、洋裁学校で縫い物を習ったあと、
どこかの店で働いたり個人で洋裁の仕事をしたりする人が多かったからだ。

 さて、そのようにして作られた最初期のアロハシャツは、
和柄、つまりキモノに描かれるような日本調の柄だった
(そのため、「着古したキモノから作られた」という俗説が生まれたのだろう)。
兜や太鼓、宝船や富士山などで構成された縁起の良さそうな柄や、
小さな花が一面にちりばめられたカラフルな柄などだ。
使われたのは、日本から輸入された(おそらく京都産の)キモノ柄のプリント生地。
ただし、「キモノ柄」と言っても、「キモノの生地」そのものじゃない。
キモノ用の生地は昔から幅九寸五分(約三六センチ)で作られていて、
これを和服の世界では「小幅」とか「並幅」などと呼ぶ。
それに対してアロハシャツに使われた和柄の生地は、
幅がそれより二倍広い(約二八インチ=約七二センチ)
「広幅」とか「大幅」と呼ばれるもの。
それは、洋服やガウンなどを作る需要に合わせて、
昔から生産され、欧米に輸出されていたものらしい。
ホノルルの、ある個人商店が、ハワイにも入ってきていた、
そんな異国情緒溢れる生地でシャツを作ってみたら、
観光客にそこそこ売れてしまった。アロハシャツの始まりは、そ
んな感じだったのかもしれない。
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