SSブログ

『ヴィンテージアロハシャツ』13~ 第一章 ヴィンテージ柄を楽しもう●今まで誰も指摘しなかったボーダー柄の意外な利用法 [枻文庫『ヴィンテージアロハシャツ』]

しばらくは、2005.10.6発売/現在品切れ の拙著 
枻文庫『ヴィンテージアロハシャツ』から、
文章を再録します。

https://www.ei-publishing.co.jp/magazines/detail/lightning-c-401979/

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%AD%E3%83%8F%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%84-%E3%82%A8%E3%82%A4%E6%96%87%E5%BA%AB-%E8%A7%92%E7%94%B0-%E6%BD%A4/dp/4777903990

*****************************************

77790399.jpg

第一章 ヴィンテージ柄を楽しもう
●今まで誰も指摘しなかったボーダー柄の意外な利用法

 レイ(生花をつないで作った首飾り)をまっすぐ延ばした柄のように、
シャツの縦方向に柄が連なっているものをボーダー柄と呼ぶ。

1350.jpg
(The Hana Shirt Co.さんのHPより引用)

このタイプは一九四〇年代後半から登場したが、数年で消えていった。
どうしてこの短い期間だけ流行したのだろう? またなぜ縦に、
しかも真ん中に柄が来るように構成されているのだろう?

198.JPG
(筆者コレクションより)
PICT0042.jpg
(筆者コレクションより)
 
今まで誰もその理由を説明してはくれなかった。でも僕は、
当時のハワイの新聞をたくさん見ているうちに、一つの仮説を思いついた。それは、
ジャケットの下に着た時に見栄えがいいようにデザインされているんじゃないか?
というもの。だって上着の胸の切れ込み(Vゾーン)から、
連なった柄がちょうど見えるし、
その見え方は花柄のネクタイを締めているみたいだから。当時の新聞には、
ボーダー柄のアロハシャツの上にジャケットやスーツを着ている人の写真が
たくさん掲載されていて、それがただの偶然だとは僕にはどうしても思えないのだ。

1398.jpg
(The Hana Shirt Co.さんのHPより引用)

 それじゃあ、どうしてそんな着方がされていたのだろう? その理由は、
アロハシャツが当時、社会からどのように受け入れられていたかを知れば、
自ずとわかってくる。

 アロハシャツは一九三五年頃に誕生したが、
第二次世界大戦前は観光客向けの土産物に過ぎなかった。それが、
戦争中ハワイに滞在した軍人や軍の職員が故郷への土産物として買うようになり、
次第に地元の人々の目にも触れるようになった。
そんな折り、四六年には、アメリカ本土から観光客を呼び込むために
「アロハ・ウィーク」というイベントが始まり、
「期間中はアロハシャツを着よう」という官民挙げてのキャンペーンも行われた。
実際は、販売数を増やしたい衣料品メーカーの強い意向を受けたものだったわけだが、
ともかくアロハシャツは、観光客だけでなく市民にも定着していき、
職場で着る人も出てきた。ところがアロハシャツは派手だから
職場の上司からはあまりウケがよくなかった。四七年には、
「職場でアロハシャツを着るのは許されるか?」という論争も勃発。
すったもんだの末、ついに市長も、夏の暑い時期だけは
職場で着ることを許可することになった。

 こうして一部解禁はされたが、アロハシャツを快く思わない人はまだ多かった。
そんな時代にボーダー柄は登場してきたのだ。この柄は、無地の部分が多く、
柄の面積が少ない。そのため上着を着てしまえば、柄はあまり目立たないし、
ネクタイのようにも見える。
これなら反対派からも比較的受け入れやすかったんじゃないだろうか? 
アロハシャツの派手さを少しでも和らげようとした結果、
生まれたものだとすれば、ボーダー柄は、アロハシャツが市民権を得る少し前の、
過渡期の柄だったと言えるのかもしれない。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ファッション

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。