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リンダ・アーサー著『20世紀のアロハ服』その58 1945年~1950年代半ばの布地(3) [リンダ・アーサー著『20世紀のアロハ服』]

元ハワイ大学教授のリンダ・アーサー氏が書いた
『20世紀のアロハ服』という本の翻訳をお届けしています。

現在は、「1945年~1950年代半ばの布地」について語られています。


『第5章「1945年~1950年代半ば
     :クラシック・シルキーズ(古典的レーヨン羽二重)

  布地(3)

(続)
レーヨンは1940年代後半に広く使用されるようになり、
主としてアロハシャツに使われた。

戦前期にはいくつかのメーカーがレーヨンを使うことを避けた。

というのもレーヨンは、
ある人が次のように言及しているような代物だったからである。

「レーヨンはクズでした、つまりペラペラで安っぽいものでした。

レーヨンのアロハシャツは、レーヨン地がより厚手になり、
染料がようやく定着するようになって登場したのです。

表面の仕上がりが滑らかでハワイ柄がプリントされているレーヨンのシャツは
第二次世界大戦後になって初めて出てきました。

戦前は誰もそんなものにプリントなどしませんでした。」

(著者注:1989年刊行のマーティ・ウェンツェル著『気持ちの良いハワイ』 P30~57、
     および1999年2月のアルフレッド・シャヒーンへのインタビューより引用)』




最後の部分に出てくる発言は、
かぎかっこで記述されているところからも、
リンダ・アーサー氏がアルフレッド・シャヒーンにインタビューした際の発言を
そのまま引用しているということでしょう。

その発言の中に出てくる、
「表面の仕上がりが滑らか」な「レーヨン」というのは、
レーヨン羽二重を指すと考えてよいでしょう。
レーヨン羽二重は、レーヨン抜染のアロハシャツによく見られる生地なのですが、
現在翻訳している第5章の副題としてリンダ・アーサー氏が使っている
「クラシック・シルキーズ」と同じものを指すと思われます
(筆者はこの用語を聞いたことがありません。
 リンダ・アーサー氏の造語かもしれません)。


上の発言を整理すると、

●戦前のレーヨン=ペラペラ/安っぽい → プリント生地として使われなかった

●戦後のレーヨン=厚手/染料がよく定着する/表面の仕上がりが滑らか
         → アロハシャツに使われるようになった

レーヨンという素材名が明記されたハワイ柄衣料品の新聞広告として
筆者が見つけた中で最も古いものは1941年3月の広告でしたので、
戦前に「プリント生地として使われなかった」というのは正確ではありませんが、
「レーヨンクレープ」なので「表面が滑らか」でなかったのはその通りです。
しかし「ペラペラで安っぽ」く、「色落ちしやすかった」かどうかはわかりません。

A1941.03.28 リバティハウス.jpg

(筆者コレクションより)



リンダ・アーサー氏がこのようにいくら力説しても立証されたとはいえず、
結局、「レーヨンアロハ登場の時期」(アロハシャツにおけるレーヨン問題)は
依然として謎のままなのです。



(次回に続く)

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