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ハワイの衣料品製造業の歴史 その17 1932~35年の広告 [ファンダバーク著ハワイの衣料品製造業]

ファンダバーク教授の本の翻訳が続きます。


(前回から引き続き、1930年代前半の、衣料品、主にワーク・クロージングを
 作る会社の広告を、教授は引用しています)


『1932~35年 広告が製品の種類を記述した(後編)

  ユニオン・サプライ社
  ホノルル・アドヴァタイザー紙
  1932年5月1日

  ”ハワイアン・プロダクツ・ショー。5月2日よりグランドセール開催。
  ピア11会場に来場された方にはクーポン券を差し上げます。
  以下の店舗でクーポン券と引き換えにお買い上げの場合、
  わが社の製品をお値引き価格でご提供いたします。
  大江商店:パラマ、宮田商店:パラマ、ユン・チョン:アアラ、ボン・トン、
  山根商店:カカアコ、福本商店:ノーススクール、モイリリ・ストア:モイリリ、
  神田商店:モイリリ、ワイアラエ・ストア:ワイアラエ、馬場商店:カイムキ、
  三上商店:カパフル、S・田中商店:キャンベル、S・片島商店:キャンベル、
  スタンダード・トレーディング:ノースキング。”
  (レーベルの写真あり)


  セイラー・モク・プロダクツ株式会社
  ホノルル・スターブリトゥン紙
  1932年5月2日

  ”セイラー・モク。ハワイで最良のお品です。
  仕事用に、遊び用に、お問い合わせのうえお買い求めください。
  セイラー・モク、オーバーオール、パンツ、カバーオール、海水パンツ。”
  (セイラー・モクのイラストあり)


  ユニオン・サプライ社
  ホノルル・スターブリトゥン紙
  1932年5月2日

  ”労働者向け衣料品及び靴ではホノルル最大の製造業者です。”
  (レーベルのイラストあり)


  セイラー・モク・プロダクツ株式会社
  ホノルル・スターブリトゥン紙
  1934年5月2日

  ”セイラー・モク。パンツ、オーバーオール、水着、カバーオール。
  ほとんどの衣料品店で販売中。
  上質な商品であることを11年間強調してきたおかげで、
  ハワイの人々はセイラー・モク・プロダクツのことを
  真っ先に頭に浮かべるようになりました。
  今週ピア11で開かれるハワイアン・プロダクツ・エグジビット
  (ハワイ製品展示会)では、私どもの展示ブースをご覧ください。
  セイラー・モク・プロダクツ株式会社によるハワイ製。”
  (海水パンツをはいた男性とオーバーオールを着た幼い少年と
   会社のレーベルのイラストあり)


  セイラー・モク・プロダクツ株式会社
  ホノルル・アドヴァタイザー紙
  1934年5月2日

  ”11年です。
  11年間、セイラー・モクは
  上質な商品をお届けするための高い基準を持ち続けてきました。
  セイラー・モクという名前は、ホノルルの人々にとって、
  最大限の信頼性を表すようになりました。
  セイラー・モク。
  5月2日から5日までピア11で開かれる
  ハワイアン・プロダクツ・エグジビット(ハワイ製品展示会)での
  私どもの展示をご覧ください。”
  (海水パンツをはいた男性とオーバーオールを着た少年のイラストと、
   ”セイラー・モク・プロダクツ株式会社によるハワイ製”と書かれた
   レーベルのイラストあり)


  チャンピオン・セールス・ファクターズ
  ホノルル・スターブリトゥン紙
  1935年5月13日

  ”長持ちする作業着をお望みなら、
  チャンピオン・セールス・ファクターズ製の衣類をお召しください。
  最良の職人技による丈夫な作業着を製造するために地元の方々を雇用している、
  ホノルルの忙しい産業の1つです。
  ハワイアン・プロダクツ・ショーで私どもの展示をご覧ください。
  衣料品をお買いになる際には、
  このレーベル(イラストあり)を探してみてください。
  チャンピオン・セールス・ファクターズは作業着の製造業者です。”


  ユニオン・サプライ社
  ホノルル・スターブリトゥン紙
  1934年7月26日

  ”ルーズベルト大統領のハワイ来訪を歓迎いたします。
  ここハワイ諸島が、行楽客の楽園であるばかりか、
  太平洋の産業の本当の中心地でもあるということを
  大統領がお分かりになると確信しております。(商標、会社名、住所の記載) 
  アメリカと日本の商品の輸入業者であり、
  作業着、靴、鞄、その他の支給品の製造業者でもあります。”


  ムサシヤ・ザ・シャツメーカー
  ホノルル・スターブリトゥン紙
  1934年7月26日

  ”ムサシヤ・ザ・シャツメーカー(着物も作ります、パジャマも作ります)。
  私の唯一の店はサウスキング通り191番地、
  アラケア通りとの角近くにあります。
  カンゲイ(歓迎)! ルーズベルト大統領閣下! 
  大統領の末永いご健康をお祈りしております。”


  セイラー・モク・プロダクツ株式会社
  ホノルル・スターブリトゥン紙
  1934年7月26日

  ”セイラー・モクは、水泳に対する意識が高い
  フランクリン・D・ルーズベルト・アメリカ大統領を歓迎いたします
  (訳者注:直訳すると「アロハ=歓迎の気持ち=を表します」)。
  我らが国の偉大なる指導者は、ハワイの土地で、
  アメリカ流おもてなしだけでなく、真のハワイ流おもてなしが待っていると
  お分かりになるでしょう。
  ハワイの海に入れば、大統領はくつろいで日課の水泳をするのは
  今までになく楽しいとお感じになるでしょう。
  セイラー・モクは、大統領が、
  有名なワイキキで泳ぐ際にたくさんの幸せが訪れますように、
  到着に合わせてお祈りしております。”
  ”セイラー・モク、海水パンツ、オーバーオール、パンツ、カバーオール、
  エプロン、その他の製品は、
  私どもの工場で、地元民を雇い、ハワイの資金を使って、作られております。
  地元の人もお金も仕事をしています!”
  ”このレーベルは本物のセイラー・モク・プロダクツです。
  ほとんどの衣料品店で販売中” 』


これらの広告から、筆者が気づいたことを順番に述べていきます。

まず、最初のユニオン・サプライ社。
日系の衣料品製造会社らしく、ほとんどが日系のお店に卸しています。
イメージが膨らむリストですね。

ユニオン・サプライがアロハシャツを作るようになるのは1950年代以降
(だと思われる)なので、この1932年の販売店リストが
そのまま使えるわけではありませんが(戦後も存在するかもわかりません)、
アロハシャツは、やはり主に日系のお店で売られていただろう、と推測されます。


次。(前回紹介した)1931年の広告では
「ハワイアン・マニュファクチャー・アンド・コミッション社」だった会社名が
1932年には「セイラー・モク・プロダクツ株式会社」となっています。
「セイラー・モク」のメーカーだとわかりやすくしたのでしょう。
(「セイラー・モク」ブランドの服は、東洋エンタープライズからも
 発売されていますが、本来は「デニムのトラウザー」のことです)
海水パンツが新たに加わっています。水着の需要が増えてきたのでしょうか?


次。ユニオン・サプライ社は1932年に、
ワーククロージングの最大手であるとうたっています。


次。1934年のセイラー・モク・プロダクツでは、
「海水パンツをはいた男性」のイラストを使っているところからして、
海水パンツをかなり「売り込んでいる」と想像されます。
作業着から、リゾートウェアへと、需要がシフトしつつあったのでしょうか?


次。1934年のセイラー・モク・プロダクツは、
「11年」という老舗感を強調して、ユニオンサプライに対抗しています。
11年もやっているので品質が高く、信頼できる製品だということのようです。
そして「ハワイ製」も強調しています。


次。チャンピオン・セールス・ファクターズはよくわからないメーカーです。
「チャンピオン」はオアフガーメントが使っていたブランドなので、
関係があるのでしょうか?それとも別の会社に商標権が引き継がれたのでしょうか?


次。ムサシヤ・ザ・シャツメーカーは1933~34年ごろ移転しているので、
その場所を強調しています。


次。1934年のセイラー・モク・プロダクツの広告は、
「アロハ」の文字を使った、格好の実例です。
筆者は、拙著『ヴィンテージ・アロハシャツ』でも触れ、
その他の「アロハシャツの歴史」の記事でも何度か紹介していますが、
「アロハシャツは、1934年のルーズベルト大統領の訪問時に、
歓迎を意味する「アロハ」の単語が流行し、その流行語をシャツと結び付けることで、
『アロハシャツ』=歓迎シャツ=という商品名が作られた」
という独自の説を唱えています。
この広告では「aloha」を英語の「welcome」の置き換えで使っているのです。
(ムサシヤは、「KANGEI」という日本語の英語表記をすることで、
 同じことを表現しています)

それと1934年のセイラー・モク・プロダクツは
「大統領→水泳好き→海水パンツ→セイラー・モク・プロダクツ」という流れで
セイラー・モク・プロダクツを売り込んでいるところが興味深いです。
また、ハワイ製をうたうだけでなく、
「自社工場で、地元民を雇い、ハワイの資金を使って、作られて」いることも
強調しています。
人々が、愛国ならぬ「愛ハワイ」的になってきていること、
ハワイ製品を意識して買うようになってきていることを示す広告だと思います。


次回は、これらの広告にも出てきた
「ハワイアン・プロダクツ・エグジビット」についての考察に移ります。


(次回に続く)

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