SSブログ

『ヴィンテージアロハシャツ』18~第二章 アロハシャツのことをもっと知ろう●「アロハシャツ」と「ハワイアンシャツ」。呼び方が違うのにはワケがあった [枻文庫『ヴィンテージアロハシャツ』]

しばらくは、2005.10.6発売/現在品切れ の拙著 
枻文庫『ヴィンテージアロハシャツ』から、
文章を再録します。

https://www.ei-publishing.co.jp/magazines/detail/lightning-c-401979/

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%AD%E3%83%8F%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%84-%E3%82%A8%E3%82%A4%E6%96%87%E5%BA%AB-%E8%A7%92%E7%94%B0-%E6%BD%A4/dp/4777903990

*****************************************

77790399.jpg

第二章 アロハシャツのことをもっと知ろう
●「アロハシャツ」と「ハワイアンシャツ」。呼び方が違うのにはワケがあった

 日本では普通の人は「アロハシャツ」と呼ぶのに、
マニアの中には「ハワイアンシャツ」と呼ぶ人がいる。
彼らの言い分は「『アロハシャツ』はある特定のブランドの名前だから、
一般名詞の『ハワイアンシャツ』と呼ぶべきだ」ということらしい。

 確かに「アロハシャツ」というネーミングは、
中国系アメリカ人のエラリー・チャンという人物が、
一九三六年に申請して認められた登録商標で、特定のブランド名。

1382c.jpg
(vintage-aloha-shirt.comさんのHPより引用)

そのため、三六年以降の数年間は、広告で見る限りは、
彼が経営するキングスミス・クロージャーズだけがこの名称を使い、
ほかの店は使っていない。それは、彼が他店に対して
「アロハシャツという名称は登録商標だから使わないように」と
警告か牽制をしたためなんじゃないかと僕は考えている。
しかも当時は、アロハシャツという服自体がまだそれほどポピュラーじゃなく、
「アロハシャツ」という言葉もあまり知られていなかった。
だからそれよりも「ハワイアン・プリントシャツ」なんて呼んだ方が
言葉から商品をイメージしやすかっただろう。
わざわざその名称を使わなくたって、特に困ることもなかったはずなのだ。

 ところが第二次世界大戦が終わると、状況は変わってくる。
ハワイを訪れる観光客が増え、
「アロハ・ウィーク」という観光週間が新たに始まった。
これは毎年、観光客の減る九月か十月に、
盛りだくさんのイベントを一週間にわたって開催し、
観光客を呼び込もうと企画されたもの。ハワイの歴史を紹介したり、
盛大な仮装パレードが催されたりした。そしてその期間中、
観光客や地元住民はアロハシャツを着るように奨励された。
「ハワイの伝統的な服だから」というのがその理由。
本当は、生まれてからたかだか十数年しか経っていないのに、
なんというマヤカシだろう。その背景には、
パイナップルや砂糖黍しか産業のないハワイで、
衣料品産業を伸ばそうという政府の意図もあったようだ。
確かに名前も「アロハ」で共通するから、都合がよかったのかもしれない。

 アロハシャツは、この観光週間の開催を機会に、
ハワイで急速に普及していき、それと共に「アロハシャツ」という言葉も、
一般名詞として急速に認知されるようになった。
その言葉の浸透ぶりは、当時の新聞を見てもよくわかる。
それまでは、引用符や注釈を付けてこの言葉を使っていたのに、
この時期を境にして、それらがなくなったのだ。
エラリー・チャンも、自分が商標として登録したこの言葉が
世間で普通に使われるようになることを止められなかったに違いない。
つまり「アロハシャツ」という言葉は、
確かに最初はある特定のブランドの名前だったが、
次第に一般名詞に変わったと理解すべきなのである。

 一方の「ハワイアンシャツ」。この言葉は、
意味があいまいだというのが僕の考え。
「ハワイのシャツ」という意味なら、
アロハシャツ以前にハワイで一般的だった「パラカシャツ」
(チェック柄のシャツ)なども含むことになってしまうからだ。
ところがこの言葉を使うのは、そういうハワイの服の歴史を詳しく知らず、
ハワイのシャツと言えばアロハシャツのことだと捉え、
ハワイという土地に憧れやノスタルジックな想いを抱いているような、
主にハワイ以外に住む人なんじゃないだろうか? 
「ハワイアンシャツ」という呼び方が一般的になったのも、
カリフォルニアのコレクター、トーマス・スチール氏の
「THE HAWAIIAN SHIRT」(ABBEVILLE PRESS刊)
という洋書が出た一九八四年以降のことだと思う。

511C8heg6jL.jpg
(Amazonより引用)

おそらくカリフォルニアなどでは「ハワイアンシャツ」の方が一般的で、
カリフォルニアの業者と取り引きすることの多い日本の古着業者も
この言葉を使うようになり、そうして日本でも一般的になったんじゃないだろうか?
 「アロハシャツ」と「ハワイアンシャツ」。
結局、英語としてはどちらも間違いではなく、このシャツを、
ハワイの内側から(ハワイの服の歴史を考慮して)見るか、
外側から(楽園のイメージを込めて)見るかによって、
呼び方が変わってくるということなんだろう。
僕がハワイで受けた印象では、「アロハシャツ」の方がより一般的なようだった。
個人的には、ハワイの歴史に敬意を表して、「アロハシャツ」の方を使いたいと思うのだ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ファッション

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。