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『ヴィンテージアロハシャツ』10~ 第一章 ヴィンテージ柄を楽しもう●似たようなハワイの風景柄がたくさん作られた [枻文庫『ヴィンテージアロハシャツ』]

しばらくは、2005.10.6発売/現在品切れ の拙著 
枻文庫『ヴィンテージアロハシャツ』から、
文章を再録します。

https://www.ei-publishing.co.jp/magazines/detail/lightning-c-401979/

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%AD%E3%83%8F%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%84-%E3%82%A8%E3%82%A4%E6%96%87%E5%BA%AB-%E8%A7%92%E7%94%B0-%E6%BD%A4/dp/4777903990

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第一章 ヴィンテージ柄を楽しもう
●似たようなハワイの風景柄がたくさん作られた

 「ランド・オブ・アロハ」のところで触れた「ミスター・ハワイ社」を訪れた時、
実は「ランド・オブ・アロハ」以外にもいくつかの柄の試し刷りを見せてもらった。
その中には、「パリ・ハワイアン」ブランドの「ハワイの風景柄」
(通称「サベージのメニュー柄」)の試し刷りもあった。

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(名古屋・グレートさんのHPより)

裏面には、「ランド・オブ・アロハ」と同様、
「昭和31年」を意味するスタンプが押されていたから、
この柄も一九五〇年代後半にプリントされていたのだろう。
実は「パリ・ハワイアン」には、似たタッチの「ハワイの風景柄」がかなり多いのだ。

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(The Hana Shirt Co.さんのHPより引用)
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(vintage-aloha-shirt.comさんのHPより引用)
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(筆者コレクションより)

 一連の「ハワイの風景柄」を見比べると、
共通したモチーフが描かれていることに気付くだろう。
それは「波」だ。静かに浜に寄せる波、うねる波、しぶきを上げる波ーー。
さまざまな表情を見せる波が、
ダイアモンド・ヘッドやヤシの木などと一緒に描かれているのだ。

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(筆者コレクションより)

しかもその描写力が秀逸。濃淡をつけた何色か
(例えば青系の配色なら水色と青と紺色)を使って描かれているため、
立体感が感じられる。そして見事なのが点描の技術。
多くの色を使っているのに、さらに色と色の間に細かな点をいくつも打ち、
その部分が中間色に見えるように工夫しているのだ。
この点々があるおかげで、実際より多くの色が使われているように見え、
自然なグラデーションが感じられるわけだ。
また波頭には点描でしぶきが描かれている。
これが描かれることで、波に動きが出て、よりリアルに見えるのだ。
これらの点描には、キモノの染色で使われる「糊防染」という技法が駆使されている。
糊防染は、防染糊という、生地を染まりにくくする糊を使う手法。
最初に、型を使って柄の特定の部分にこの糊を置き、その上から捺染すると、
糊の付いた部分だけ、白く染め残したり淡く染めたりすることができるわけだ。
またこの糊に別の色の染料を混ぜれば、その部分だけ違う色に染めることもできる。
つまりこの糊防染の手法を使えば、
型だけでは彫りが細かすぎてにじんでしまう波しぶきなども
きれいに表現できるというわけ。

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(筆者コレクションより)

五〇年代の日本のオーバープリントには、
こんなキモノの捺染技法がふんだんに使われている。

 ところで「パリ・ハワイアン」の、浜辺にアウトリガー・カヌーが置かれた柄には、
壁縮緬のものとフジエットのものの二種類がある。

PICT0064.JPG
(筆者コレクションより)

当時、人気があり、長期に渡って作り続けられたのだろう。
ただ、じっくり見比べてみると、ヤシの木の位置関係やハイビスカスのあるなしなど、
細かい部分が微妙に違っている。
こういうマイナーチェンジが加えられた柄というのはそれほど多くはないのだが、
なぜか「パリ・ハワイアン」にはほかにもいくつか存在する。
「間違い探し」のようにじっくり見比べていると、これが結構面白い。
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