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ハワイの衣料品製造業の歴史 その66 1938-41年 ハワイ製衣料品に言及した、地元小売店の広告例(中編) [ファンダバーク著ハワイの衣料品製造業]

ファンダバーク教授の本の翻訳が続きます。




 『1938-41年 ハワイ製衣料品に言及した、地元小売店の広告例(中編)

  ワットムルス ワイキキ店
  ホノルル・アドヴァタイザー紙
  1939年7月6日

  ”おしゃれなハワイのスタイルを取り入れた、ファッションの行列の先頭を行く。
  華やかな色合いのホロク--1939年版--サイズは14から20まで--
  オリジナルのハワイ柄プリントの壁縮緬。
  カラフルなハワイ柄プリントの壁縮緬を使った
  フォーピースのビーチ・アンサンブル
  --ショートパンツとブラとイン・オア・アウトの
  (裾をボトムスの中に入れても出しても着られる)シャツと
  ネッカチーフの4点セット。
  ヘリンボーン柄の、厚手の富士絹やピッグスキンを使った、
  あらゆる用途で着られる男性用のおしゃれなシャツ。
  本物のバティックや珍しい壁縮緬のプリント生地を使った、
  流線型の水泳用ショーツ--防縮加工済みの裏地付き。”


  リバティ・ハウス
  ホノルル・アドヴァタイザー紙
  1939年7月21日

  ”シボのある縮緬地のハウスコート--夏の日のように輝いて見える、
  かわいい花柄のプリント。”


  マキナニー
  ホノルル・アドヴァタイザー紙
  1939年7月23日

  ”おめでとう、ブランフリート
  (訳注:ブランフリートの新工場建設を祝った言葉)。
  当店は、ハワイのスポーツウェアの製造における貴社の進歩に
  お祝いの言葉を述べます。
  貴社の多くの素晴らしい商品が、
  当店のスポーツウェア売り場すべての中で
  とてつもなく人気であることを証明してきました。願わくは、
  このハワイの重要な衣料品産業界での指導的役割が成功裏に続かんことを。”


  チャーリー・チャン
  ホノルル・アドヴァタイザー紙
  1939年11月1日

  ”男性用のイン・アンド・アウトの
  (裾をボトムスの中に入れても出しても着られる)シャツ1品番。
  たくさんの種類の柄。XSからLまでの完全なサイズ。”


  ウィング・ウォー・タイ株式会社
  ホノルル・アドヴァタイザー紙
  1939年11月1日

  ”シルク生地。重みがあり色落ちしにくい最上級の
  中国製ダマスク織シルク地を全種類ご用意。
  約125色から成る豊富な在庫があるので、
  ドレス用の素材に関してはどんな好みの方にもご満足いただけるでしょう。
  中国シルクのパジャマもオーダーメードでお作りします。”


  チャイナ・ギフト・チェスト
  ホノルル・アドヴァタイザー紙
  1939年11月5日

  ”お客様のクリスマスのお買い物は当店ですべて間に合います。
  シルクの下着や衣類、ハワイアン・スポーツウェア、
  リネン類とレース製品、チーク材の家具、その他のお買い得品を特価販売。”


  ワットムルス・イースト・インディア・ストア
  ホノルル・アドヴァタイザー紙
  1939年11月5日

  ”本土のお友達に。当店のビーチ・ウェア売り場が、
  カラフルなハワイアン・デザインのシャツ、ツーピースとスリーピースの水着、
  ハウスコートなど、いつもとは違う特価品をご提供します。
  お品物はお包みしてどこへでもお送りします。” 』



 今回のところで、まず補足しておかなくてはならないのは、
「縮緬」という生地についてです。
表面に凹凸ができる生地のことで、英語では「crepe(クレープ)」と呼びますが、
店舗によって微妙に表現が異なっており、その原産地が異なることが推測されます。
ここでは「壁縮緬」(英語ではkabe crepe=カベ・クレープ)、
ただの「縮緬」(crepe)、「フレンチ・クレープ」(French crepe)
などの言葉が使われています。

 まず壁縮緬ですが『apparel-fashion wiki(アパレルファッション・ウィキ)』によれば
「壁縮緬
  組織 平織
  品質 絹、レーヨン

  壁縮緬とは一見、縮緬のように見えるが、緯糸に強撚糸は使わず、
  糸そのものが凹凸の表面をもつ壁糸を使って織り、外観を縮緬に似せたものである。
  縮緬のような伸縮性もなく、柔らかさもない。
  元々は絹を使った帯地等に使用する和装素材だが、
  日米貿易再開後の1950年代頃のビンテージアロハシャツに
  レーヨン壁縮緬を用いた物が多く見られる。
  生地に深い凹凸が有り、手捺染でしかプリントが施せない為、生産効率が悪い。
  機械化に伴う上質な職人の確保が困難になるとともに、
  工賃の上昇、生産コストの上昇の影響から1960年前後を境に
  生産数が減少している。」
  (https://apparelfashionwiki.com/?%E5%A3%81%E7%B8%AE%E7%B7%AC
とあります。とてもよくまとまっているので理解しやすいと思います。

上の広告で紹介されている時代のものは、おそらく「シルクの壁縮緬」だと思われます。
(それに対して、1950年代のアロハシャツのものは「レーヨンの壁縮緬」です)
筆者が、1930年代のシルクの壁縮緬のシャツを所有していないため、
1950年代のレーヨンの壁縮緬の凹凸感(↓ボタンの下の生地)を参照してください。

壁縮緬の質感.JPG
(筆者コレクションより)

もともとは和装用であることから、シルク製もレーヨン製もどちらも
100%日本製とみてほぼ間違いないでしょう。

ワットムルスは、「エルシー・ダース(ワットムルスの義妹)が、
ハワイの花柄のプリントを日本に発注した」と、以前触れられていたように、
日本との取引があったらしく、
上の広告例でも(日本製との表記はありませんが)壁縮緬を強力に推しています。

それに対して、米国本土とのつながりが強いリバティ・ハウスやマキナニーでは、
本土製の製品や、ブランフリートのような、米国本土とのつながりが強い
ハワイの白人系製造会社製の製品(使う生地も本土製が多い)を主に扱っていたと思われ、
ここでは「Krinkle Krepe」(シボのある縮緬)を紹介しています。
壁縮緬とは異なる縮緬だと推測されます。
(素材表記がないため、綿のクレープ=シアサッカーのような生地の可能性もあります)

また、これは次回の後編で紹介する広告例ですが、
ザ・ブロードウェイという店では、「フレンチ・クレープ」が使われています。
フレンチ・クレープとは、ウィキペディアによれば、
「フラットクレープに似た平織りの軽いシルクまたはレーヨンの布」
とのことで、また少し質感の異なる生地のようです。

それらに対して、中国系の店舗では「チャイニーズ・シルク」を推しています。
そして、これまた次回の後編で紹介する広告例ですが、
ジャパニーズ・バザーという日系の店舗でもシルクが扱われていますが、
「ハワイ柄のプリント生地」と表記されており、
日本でプリントさせたオリジナルのハワイ柄シルク生地かもしれません。
初期のアロハシャツでは、着物柄=和柄のシルクプリントが主流で、
それはすでにあった生地を使っていたことを考えれば、
プリント生地のバリエーションも急速に増えてきたと言えると思います。

各店各様の、差別化合戦の様相ですね。
それだけ、競争が激しく、また活気があったということでしょう。


(次回に続く)

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