ハワイの衣料品製造業の歴史 その39 1935年 ハワイならではのファブリック・デザインが地元市場に出回った

ファンダバーク教授の本の翻訳が続きます。



前回は、本文の補足資料の広告を紹介したため、
お約束した「これから面白くなる」ところが、
1回延期となってしまいました。
いよいよ今回から、動き出します。
やはり分水嶺は「1935年」ですね。


　『1935年 ハワイならではのファブリック・デザインが地元市場に出回った

　　1920年代から30年代初頭にかけて、
　日本のシルク製プリント生地や
　ローシルク（精錬していない目の粗いシルク）生地が頻繁に使われた。
　綿の浴衣や着物の布もまた、
　バティックやレーヨンやその他の本土の生地と共に使われた。
　1935年と36年にジャワ・バティックがハワイで非常に人気となり、
　その年、地元新聞に出た多くの広告がジャワ・バティックのことに触れている。
　ある広告は次のように述べている。

　　”これらの新しいジャワ・バティックを使って、
　　水着やホールターや短パンやバンダナを作るのもまた人気です。”

　　これらのプリント柄がハワイでこれほど人気だったという事実が、
　テキスタイル向けのハワイアン・デザインの創作熱を高めたのである。
　　1935年7月7日付ホノルル・アドヴァタイザー紙に載った、
　ガンプスという店の広告には次のような言葉があった。

　　”ハワイの花のデザインをあしらった生地。
　　ガンプスでしか買えません。
　　ロイヤル・ハワイアン・ホテルの正面にあります。”

　　ハワイ柄のプリント生地は、
　1935年にハワイ市場に紹介されたように思われるが、
　ある有名なベンチャー企業が
　ハワイアン・ファブリック・デザインの生産と宣伝を始めたのは
　1936年のことである。
　これを始めたのはワットムルス・イースト・インディア・ストアである。』


　文章が少しわかりにくいので、話を整理しますと、
「ハワイでは、1920年代から30年代初頭にかけて、
日本のシルク製プリント生地、ローシルク生地、綿の浴衣や着物の布、
（ジャワの）バティック、（米国本土の）レーヨンやその他の生地
が良く使われた、
さらに1935年と36年に、ジャワ・バティックが人気になった」
ということのようです。

　これに関して、以前、筆者がハワイの関係者に聞いた話を付け加えるなら、
「1930年代中ごろには、壁縮緬（カベ・クレープ）が日本から入ってきており、
ハワイではよく使われていた」そうです。
（この話は、著書『ヴィンテージ・アロハシャツ』に掲載しました）
壁縮緬は、上の記述では「着物の布」に含まれるのでしょうか？

　ともかく、これらのプリント柄がハワイで人気を博したことが、
結果的に「テキスタイル向けのハワイアン・デザインの創作熱を高めた」
わけです。つまり、1930年代前半までのプリント柄は、
ハワイの外（日本、インドネシア、米国）から持ち込んだものなので
特にハワイっぽい柄ではなかったのですが、
1935年ごろを境に、「ハワイ柄」をオリジナルでデザインしようという機運が
生まれてきた、というわけです。
その背景には、（ここでもまた）ハワイアン・プロダクツ・ウィークの運動、
つまり、ハワイで作ったものやハワイらしいものを買おうという運動が
あったと考えられます。

　また、「1935年と36年に、ジャワ・バティックが人気になった」とありますが、
筆者が調べたところではでは、
「1936年8月」のワットムルス・イースト・インディア・ストアの広告に、
「バティック・シャツ＄1.25」（男女不明）
という記述があります。
いわば「ジャワ・バティック生地のアロハシャツ」ということになりますね。
（筆者はまだ見たことがありません）
そのほかにも
「男性物のバティック柄の海水パンツ＄1.95より」
「女性物のバティック柄のショーツとブラのセット＄1.45」
「女性物のバティック柄のコート＄1.45」
が紹介されています。

　そして、「ハワイ柄のプリント生地は1935年にハワイ市場に紹介された」
（ハワイの花の柄を含む）という、教授の見解も示されています
（はっきりとした証拠がないため「ように思われる」と推測する形になっています）。
翌1936年には、ワットムルス・イースト・インディア・ストアが
オリジナルのハワイ柄プリントを発売したと（確信をもって）教授は述べています
（ただし筆者は、その新聞広告をみつけられませんでした）。

　ともかく、アロハシャツのベースとなる、
「ハワイ柄のプリント生地」がここで登場したことになります。
（ココナッツ・ボタンがすでに登場したことは前回ご紹介しました）


（次回に続く）

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